中国の臓器狩り、暴かれて10年  「即刻停止」を求める決議案が各国で通過

中国の臓器狩り、暴かれて10年  「即刻停止」を求める決議案が各国で通過

 

 

 はじめに:
 2006年、中国共産党政権が、生きた人間から強制的に臓器を摘出している事実(いわゆる臓器狩り)が明るみに出た。その後の10年間で、それを裏付ける膨大な調査報告が提出されたことにより、米国、欧州連合、豪州、イタリア、カナダ、アイルランドといった各国の政府当局は、中国政府に対し、法輪功学習者ら「良心の囚人」に対し行われている臓器狩りを停止するよう求める決議案を続々と採択している。中でもイスラエル、スペイン、台湾は、自国民が中国で臓器移植を受けることを実質的に禁止する法律を制定した。
 
 
米国の動き:下院で343号決議案を可決
 2016年6月13日、米下院は343号決議案を通過させ、中国政府に対し、法輪功学習者ら良心の囚人に対する臓器の強制摘出を即刻停止するよう要求した。この343号決議案は、下院議員185人の共同署名を得ている。
 

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 この議案の起案者、イリアナ・ロス・レイティネン(Ileana Ros-Lehtinen) 議員は6月13日、下院の全体会議で、フリーダムハウス(訳注:Freedom House、米国に本部を置く国際NGO団体で、毎年世界人権状況白書を発行している)の2015年年次報告で、中国で収監されている良心の囚人の中で、法輪功学習者が最も高い割合を占めていることが示されていると発言した。
また同議員は、ニューヨークタイムズが報じた中国人医師による全身の臓器移植計画に関する記事を取り上げ、「このことは、中国国内の法輪功学習者及びその他の良心の囚人にとって何を意味しているのか?このような非人道的な実験が、彼らの生命に一体何をもたらすのか。それに気づいた時、私は全身の震えが止まらなかった」と述べている。

 

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 さらに同議員は、「今回の決議案を通じて、我々は中国共産党政権に対し、法輪功学習者に対する継続的な弾圧政策を糾弾するというメッセージを送っている。こうした迫害政策は極めて嫌悪すべきものであり、特に、本人の同意なく強制的に行われる臓器の摘出といった非人道的な行為は停止しなければならない。我々は、このような犯罪行為の続行を許すことはできない」と述べ、中共の臓器強制摘出について「普遍的に反対されるべきであり、無条件で停止すべきだ」と表明している。
 
 米議会では2013年6月27日にも281号決議案が提起され、中国当局に対し法輪功学習者からの臓器強制摘出を停止するよう求めていた。そのため、今回可決された343号決議案は、この281号決議案の延長だと認識されている。281号決議案は、議員245人(下院議席数の56%)の共同署名を集めた。
 
 
 EUの動き:48号書面声明の発表と「臓器の強制摘出停止」緊急議案の提出
 2016年9月12日、欧州議会議長のマルティン・シュルツ氏は48号書面声明を正式に発表し、中国共産党に対し、良心の囚人からの臓器摘出を停止するよう要求した。また、同声明により、EUが全面的で透明な調査を実施することも呼びかけている。今回の声明は、欧州議会が過去10年間で発表した書面声明のうち、中国問題に関連する唯一のもの。
 

 48号書面声明は、9カ国の超党派議員から今年4月27日に提出され、3カ月でEUに加盟する全28カ国、すべての会派を網羅する414人の議員からの署名を集めた。その中には、通常は書面声明に署名を行わない一部の議員も含まれていた。
 

 同声明は、欧州委員会及び欧州理事会に、2013年12月12日の欧州議会で通過した「中国の生きた人間からの臓器強制摘出の停止を求める決議(P7_TA(2013)0603)」を実施し、報告を提出するよう求めている。この決議において、欧州議会はEU及びその加盟国に対し、中国の臓器摘出問題を公に非難するよう要求している。また、こうした非人道的行為に関与したものに対し法的措置を取るとともに、中国へ渡航する国民に対し、この問題をさらに周知させることも求めている。
 
 
 国連拷問禁止委員会の動き:強制的臓器摘出に関する調査を要請
 国連拷問禁止委員会は2015年12月に出した報告書で、国連に対し、中国の臓器強制摘出について独立調査を実施するよう求めている。国連の宗教・信仰の自由に関する特別報告者ハイナー・ビーリフェルド氏は、中国当局の推進する臓器強制摘出を「残忍非道な行為」だと強く非難している。
 
 
 豪州の動き:「豪・中人権対話」で議題に
 2013年3月、豪州下院は満場一致で、豪州政府が国連及び欧州委員会の提唱を支持し、臓器の強制摘出に反対するよう呼びかけた。
 それに先立ち、2007年7月には、同国政府は北京で行われた豪・中第8回人権対話で、この問題を議題に取り上げている。翌2008年6月には、当時の豪外相ステファン・スミス(Stephen Smith)氏が、自身と政府関係者はカナダが実施した独立調査報告を精読し、「信憑性の高い告発」だと認識していると述べ、「我々は中国に、臓器強制摘出に関し詳細な説明を求めるとともに、独立した信頼性の高い調査者によってこの件に対する調査が自由に行われるよう提起する」と表明した。
 
 
 カナダの動き:国際人権小委員会、中国政府への非難動議を採択
 2014年11月6日、カナダ下院外交委員会の国際人権小委員会は動議を通過させ、中国当局が臓器移植を目的として、生きている良心の囚人から臓器を強制的に摘出するという国家ぐるみの臓器収奪を非難する議案を採択し、同意なく生きた人間又は死亡者から臓器を摘出するという行為を即刻停止するよう求めた。
 
 
 イタリアの動き:良心の囚人の釈放と、全面調査を要求
 2014年3月5日、イタリア下院人権委員会は全会一致で243号決議(Doc. XXIV-ter, n. 7)を採択し、イタリア政府に対し、中国に法輪功学習者ら良心の囚人の釈放を求めるとともに、臓器収奪について全面的な調査を実施するよう要求した。
 またこの決議が可決される前、280万人以上の購読者数を誇るイタリア最大の一般紙、ラ・レプブリカは、中国当局による法輪功学習者からの臓器収奪は悪魔の所業だと痛烈に批判する記事を掲載した。
 

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 アイルランドの動き:公聴会を開き、臓器収奪防止決議案を採択
 2013年7月10日、アイルランド議会外交及び貿易連合委員会(Joint Committee on Foreign Affairs and Trade)は、中国当局による臓器収奪に関する公聴会を開催し、法輪功学習者に対する臓器狩りを阻止する決議案を採択した。
 
 また同国の国営テレビ局RTEはこの公聴会を生中継で放送し、日刊紙アイリッシュタイムズは、公聴会のニュースを即刻紙面に取り上げた。
 
 
 台湾の動き:台湾立法院が全会一致で決議を採択
 2012年12月11日、台湾立法院は全会一致で、中華民国政府は法輪功学習者を含む4033人の中国の良心の囚人を救出することに関心を持つよう要求する決議を採択した。同決議は、米国や国連などの人権に関する報告書が明らかにした事実として、法輪功学習者とチベット人は中国における迫害の被害者の中で最多数を占め、その迫害は最も深刻だという認識を示した。「中国当局は臓器売買のために生きている法輪功学習者及び死刑囚から臓器を収奪している」「恐ろしくて驚くべき事件」「天が許さない」などと厳しく糾弾している。
 
 
 米国内のその他の動き:①バージニア州医学会の決議案
 2013年10月25日から27日にかけて行われた年次総会で、米バージニア州医学会(the Medical Society of Virginia,MSV)は「中国共産党による臓器収奪の停止」を求める13-207号決議案を正式に議題として取り上げ、法律・違法医療行為・規則制度に関する常任委員会においてこの議案が可決された。この議案は、米議会で可決された関連議案を支持することを目的としている。
 
 この13-207号議案を提出したマニュエル・M.べランドレス氏はバージニア州医学会の会員で、ベテランの救命救急医でもある。また、米国コミュニティ救急基金(The American Foundation For Emergency Community)の創設者でもあり、長年この基金の会長を務めている。
 
 べランドレス医師は、同医学会が今回の決議案を採択した理由を次のように述べている。「私はこの件を、医学的な大虐殺だと認識している。彼ら(中国当局)は絶対に(この悪行を)停止しなければならない。これは非常に重要なことだ」
 
 中国共産党が真・善・忍を信条とする法輪功学習者から、生きたまま臓器を摘出していることについて、同医師は「完全に間違っている。新たな邪悪な方法だ」「カナダ人弁護士のデービッド・キルガー氏とデービッド・マタス氏が指摘した通りだ。これは世界でも類を見ない悪行だ」と激しく非難している。
 
 
 米国内のその他の動き:②地方議会における非難決議の採択(ジョージア州、デラウェア州、カリフォルニア州、メーン州、コロラド州、ミズーリ州、イリノイ州、ミネソタ州)
 米国内では、州政府や市議会の多くも、臓器狩りを非難、糾弾する決議案を可決している。
 
 2006年4月17日、ジョージア州アトランタ市議会では、連邦議会に対し、中国で発生している臓器収奪について調査を求める決議案を通過させた。こうした反人道的な犯罪行為は直ちに世界中から注視され、調査が実施されるべきであり、弾圧政策の継続は停止されなければならないとの認識を示した。
 
 2006年6月20日、デラウェア州上院は全会一致で、上院合同決議第41号を採択し、中国で発生している法輪功学習者に対する弾圧政策と臓器収奪を非難した上、ブッシュ大統領(当時)に対し、この人権問題に対する独立調査を実施するよう求めた。同州ではそれとは別に、ウィルミントン市議会で2006年6月1日に、ニューキャッスル市議会でも同月の13日に、中国への非難決議案を採択している。
 
 2007年6月18日、カリフォルニア州ポモナ市長及び市議会は満場一致で、2007年第73号議決案を採択し、中国共産党政権が行っている法輪功学習者への残虐な弾圧政策と、臓器収奪という犯罪行為を激しく糾弾した。
 
 メーン州では上院下院合同で2008年4月に行われたグローバル人権聖火リレーを称賛し、中国共産党政権による違法な臓器強制摘出を非難した。(訳注:グローバル人権聖火リレーは、法輪功学習者への弾圧を始めとする中国当局の数々の人権弾圧を広く世界に認識させるために、北京オリンピック前に世界38カ国、150都市を順番に巡って行われた)また2013年1月末には、同州の上院と下院で、2013年2月を法輪大法月間とすることを決議した。また決議に際し、中国共産党による迫害政策と臓器収奪を非難した。
 
 2008年4月4日、コロラド州の両院は、中国共産党政権による生存中の法輪功学習者からの違法な臓器摘出及び臓器販売が、オリンピック憲章に違反するうえ、深刻な人権問題だとして共同決議案を採択し、中国政府に対し、満場一致で人権弾圧の即時停止を要求した。
 
 2013年7月12日、ミズーリ州セントルイス市議会は、中国共産党による法輪功弾圧政策及び生存中の法輪功学習者からの臓器収奪という犯罪行為を厳しく糾弾する決議を採択した。
 
 2014年2月26日、イリノイ州下院はその年の本会議において、全会一致でHR0730 議案を採択し、「米国政府に対し、中国国内で行われている臓器移植に対する調査を実施し、生存中の法輪功学習者からの違法な臓器摘出を全力で阻止することを強く要請するとともに、法輪功学習者の臓器を用いた移植手術に関与したことのある全ての医師に対し、米国への入国を禁止するよう要求する」と決定した。
 
 2016年5月20日、ミネソタ州第89回上院では、投票により満場一致でSF2090 議案を可決した。この議案は中国国内で、中国政府の公認の元で、収監中の法輪功学習者から臓器狩りが行われていることを非難している。
 
 
 米議員に対する中国当局からの圧力と妨害工作
 中国当局は、欧米諸国が次々とこうした決議を採択することに脅威を感じているため、それを阻止することを狙っている。以下に述べるミネソタ州SF2090議案関連のできごとは、その一例に過ぎない。
 
 明慧ネットが報じたところによると、ミネソタ州の議案を提出したダン・D.ホール上院議員は、中国領事館から来訪を受けたことを上院会議の席で明かし、「中国当局は(法輪功学習者への)弾圧を行っていないと表明した上、こうした(生存中の学習者からの臓器収奪)疑いを否定した」と証言した。そして「米国は信仰の自由と人間の自由を信じている。我々は、どこで発生した不正であってもその不正を照らす一筋の光であらねばならない」と述べている。
 
 同じく議案の提出者であるアリス・M.ジョンソン上院議員は、SF2090議案が提出されて間もなく、シカゴ中国領事館から書簡を受け取ったことと、領事館職員が来訪し、この議案の通過を妨害しようとしたことを明らかにしている。
 
 同議員は、この問題に対する中国当局の嫌がらせや名誉棄損はばかげていると考えている。そして「臓器収奪という犯罪行為が明るみに出たことは、この犯罪を終了させるための重要な一歩だ」「中国当局は、彼らの人権弾圧を世界に知られたくないと考えている。我々が継続的に注視し、圧力を掛ければ、犯罪は止められる」とも述べている。
 
 
 台湾、イスラエル、スペイン:自国民の海外臓器移植を規制
 2015年6月12日、台湾立法院は「人体臓器移植条例」修正案を可決し、台湾国民が臓器提供を受ける場合、国内外を問わず「無償贈与」方式とすることを明確に規定した。違反者には最高で5年の実刑判決と150万元(約480万円)の罰金が科せられる。医師が臓器移植の仲介に関わった場合、医師免許がはく奪される。
 
 2012年4月、イスラエル政府は、同国民が海外で提供者が不明な臓器や、違法なルートで入手した臓器を使った移植手術を受けること(移植ツーリズム)を禁止する法律を成立させたほか、国外で臓器移植手術を受ける同国民に対し、保険会社が保険金を支払うことも禁止した。
 
 スペインでは2010年に「スペイン臓器移植法」を改訂し、同国民が中国で移植手術を受けることを禁止した。同国民が中国で移植手術を受けた場合、起訴されるとしている。
 
 
( 原稿 : http://www.stop-oh.org/download/kakokunohanei.pdf )
 
 

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